助成事業完了報告

宛先:日本財団
会長:曽野綾子様
報告日付:2005年5月13日
事業ID:2003305823
事業名:繊維系廃棄物の船舶建造材への利用に関する研究
団体名:社団法人 日本繊維機械学会
代表者名:前川善一郎
TEL:06-6443-4691
FAX:06-6443-4694
住所:〒550-0004
大阪市西区靭本町1丁目8番4号
(大阪科学技術センタービル内)
事業費総額:7,000,000円
自己負担額:1,400,000円
助成金額:5,600,000円
事業開始日:2004年4月1日           事業完了日:2005年4月30日
 
 
事業目標の達成状況
 本事業では繊維廃材から擬木(木材代替材料)製造技術の確立を図り,その技術をもって,擬木を用いた船づくりを実施し,現在使用されている木造船やFRP船との代替が可能かを検討することを1つの目標とした。これに対して20世紀初期から近年までヨット競技に広く使用されていた「Aクラスディンギー」の図面をもとにオールで漕ぐ船と帆走可能な船の2隻を建造し,池および海でのフィールドテストを行い,十分実用可能であることが明らかになった。加工性は木材と同等,あるいはそれ以上であり,擬木が木材より低価格になれば木材代替が可能であることが明らかになった。価格に関しては擬木を大量生産できる機械の開発により解決可能と判断できる。FRP船に比べると重量面,大量生産性で劣るが,環境面あるいは少ロット生産の場合は擬木の方が有利になる可能性があると考えられた。もう1つの目標として船の建造を次世代を担う若者とともに行い,環境保護への興味と若者による船造りの新しい発想が生まれることを期待したが,今回の2隻は大学院生ならびに高校生が主体で建造し,参加者全員,船の構造を知ると共に船造りに大きな興味を示すとともに自ら考え,熱心に建造に取り組んだ。以上のように本事業は目標を十分達成した。
 
事業成果物
      1.古着からできた手漕ぎボート
      2.古着からできた帆走可能なヨット
      3.せんだいメディアテークで開催の「古着から出来たボート・ヨットの展示・試乗会」の資料200部(A4 一部カラー印刷 19P)
      社会的変化
      1.本事業は多くのマスコミに取り上げられ、大きな反響があった。
 
事業内容
 
      本事業は(社)日本繊維機械学会・繊維リサイクル技術研究会のメンバーを中心に次のような事業が展開した。
 
1.繊維廃材からの造船用擬木(板材)の成形
   研究会メンバーである門倉貿易(株)および京都工芸繊維大学木村照夫研究室で開発した繊維廃材を素材とする擬木をベースとして、船作りに必要な厚み、物性をもつ板材を成形した。
 
2.擬木からの和船の建造
   建造する船の形式として、丸型、鎧張りを選んだ。この形式の船として20世紀初期から近年までヨット競技に広く使用されていた「Aクラスディンギー:長さ3.6m」の図面を手に入れ、CADで型紙を作成し、この型紙を用いて板材から船のパーツを切り出し、これらのパーツを張り合わせて船を作成した。造船の指導は神戸商船大学名誉教授の松木哲先生にお願いした。
 
3.船作り教室の開催
   船の建造には研究会メンバーに加えて、京都工芸繊維大学大学院生および兵庫県立武庫之荘総合高校・武庫工業高校の生徒が携わり、松木先生の指導のもと大学院生はオールで漕ぐ形式の船を、また、高校生は帆走可能なボートを建造した。船の完成写真は別紙の写真の通りである。
 
4.講演会の開催
   造船作業に携わる繊維リサイクル技術研究会メンバーおよび高校生を対象に7月20日に武庫之荘総合高校において「繊維系廃棄物の船舶建造財への利用に関する研究」についての講演・講習会を行った。また、1月14日には京都国際会議場にて「繊維廃材を用いた擬木船の完成披露と記念講演会」を一般の参加者も得て開催した。
 
5.製造した船の性能試験(フィールドテスト)
   製造したオールで漕ぐタイプの船は2005年1月14日に宝ヶ池(京都市左京区)で進水式と試乗会(性能試験)を行った。また、帆走可能なボートは2005年3月24日に兵庫県立海洋体育館(芦屋マリンセンター、兵庫県芦屋市)で進水式と試乗会(性能試験)を行った。いずれのボートも快走し、出来映えは上々であった。さらに2隻の船の展示会と試乗会を2005年3月29日~31日にせんだいメディアテーク(展示)ならびに七北田公園泉ヶ池(仙台市)(試乗会)で行った。試乗会には一般の方々も大勢参加し評判は上々であった。進水式・試乗会の様子は多くのTV、新聞に取り上げられた。新聞記事の一例は添付の通りである。
 
6.報告書の作成
   事業内容を本報告書にまとめた。
 
 
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